
目が覚めたとき、珍しく身体も頭も重苦しくないことに気づいた。
夢も見ずにぐっすりと眠ったのは久しぶりだ。
こういう朝を迎えるとき、必ず隣りにはあの男が居る。
現に今。
背中から緩く身体を抱く腕と、微かではあるが確かに聞こえる寝息がそれを手塚に思い出させている。
寝顔を見られるのは嫌いだと告げて以来、乾は手塚に背を向けるか、こうして背中から抱いて眠るようになった。
この男を久々に泊めることになったのは、降り止まなかった雨のせいだ。
傘を持たない乾が当然のような顔で付いて来るのを許して、雨で濡れた身体を暖める口実を与えたのは、言うまでもなく自分のほうがそうして欲しかったからだ。
乾が自分を抱くのは、乾なりの好意の形なのかもしれないが、それは愛情とは程遠い感情であることはわかっている。
そのくせ、乾は誰よりも手塚を上手く抱けるのだ。
渇いた皮膚に、快感という名の水を染み込ませ
眠れない身体に、深い睡眠を呼び寄せる。
そんな風に、乾は与えることばかりが上手くて嫌になる。
これ以上、欲しがりたくないのに。
いつか乾に抱かれたことを後悔するときがくる。
強い効き目の薬には、それに見合った副作用が必ずあるのだから。
STINGER3の続き。すれ違い両想いの二人です。
手塚が気づいてないだけで(気づきたくないのかも)、乾は手塚にベタ惚れです。そういうのに萌えるのです。
…でもいつかはハッピーエンドになって欲しい。ま、描くのは自分なんですがね。