手塚の復讐

『好きだよ』

どこが?

『全部』

ふざけるな。

『本当』


お前のはただの錯覚だ。
俺を、勝手に理想化するな。
いつも、そう言っているのに。

「そうかもしれないね」なんて、涼しい顔で笑っている。
いつも一方的に、お前に振り回されて、俺はイライラさせられっぱなし。
お前に好きだと言われるたびに、俺がどんな想いでいるかなんて、考えてもいないだろう?
お前はいつも好きなときに、好きなように、俺を困惑させる。


それなのに。

自分はそうやって、ひとり余裕のある顔で先を歩く。
俺には、そんな余裕を与えずに、「好き」という言葉で追い詰めてくるくせに。


だけど、わかった。
お前の顔色を変えてやれる方法がひとつあること。



「乾」
「何?」
何も疑わず振り向くお前に、ふいうちで、唇を合わせる。


「…道の真中でいきなりやるなよ」

思った通り、お前はうろたえて顔を真っ赤にしてる。
硬直して立ち尽くすお前を置いて、俺は歩き出す。




いつでも俺がやられっぱなしだと思うなよ?



追いかけてくる足音を背中で聞きながら、あの手強い男から、俺は1勝をあげたことを確信した。


2004.1.26

たまには手塚から。

見つけてくださってありがとうございます。これはホントは漫画にするつもりだったネタですが、面倒なのでやめました。手塚は仕返ししたつもりで満足してるかもしれないけど、どっちにしろ美味しい思いをしてるのは乾だと思うんですがね(笑)。
でも人通りが無かったとはいえ(無いんです)、お外でちゅーされて乾が固まっちゃうのは、想像すると可愛いと思うんですがどうでしょう?

ささやかなものですが、喜んでいただけたら幸いです。

※2009.11.18再アップ