レトロウイルス:BIRTHDAY.ver5(R18)
恥ずかしさは、もう感じなかった。
そんな余裕が、なかっただけかもしれない。
手指だけでなく、唇や吐息が肌に触れるたびに、自分が敏感に反応するのがわかる。
それが乾にも伝わり、更に熱くなってるようだ。
ごく自然に、互いの昂ぶりに手を伸ばした。

刺激する動きは、徐々に単調で強い物に変わっていく。
乾の荒い呼吸や、湿った音。
触れ合う肌の濡れた感触。
時折寄せる眉の間に光る汗。
頭の中は快楽に飲み込まれそうになっているのに、五感の全部が貪欲に乾を求めようとしている。

「あ…っ」
乾の手の動きが強さを増し、手塚の上半身が、びくりと仰け反った。
その弾みで、乾から手が離れてしまう。
わかっていはいたが、倒れそうな身体を支えるので、精一杯だった。

乾は、迷うことなく手塚の腰を引き寄せ、その大きな手で、自分と手塚の一部を包み込む。
そして、緩急をつけながら、上下に動かし始めた。
「いぬ、い」
「俺の好きにしていいんでしょう?」
汗の浮かんだ顔で、乾は微かに笑っていた。
首を縦に振ると、その笑顔がもっと切羽詰ったものに変わる。
ここで、そんな顔をするのは、卑怯だ。
今までに見たことない表情を見せられて、胸の奥が苦しくなった。

自分でするよりも、遥かに強い快感が、次から次へと湧き上がってくる。
もう喘ぐことしかできず、肘で上半身を支え、固くシーツを握りしめた。
それでも、身体を倒したくなかったのは、達する瞬間の乾を見たかったからなのだと思う。
自分自身はすでに、いつ達っていもおかしくない状態だったが、その時まではと必死で堪えた。
だが、もうそろそろ限界らしい。

足の内側が痙攣し、うまく呼吸が出来ない。
もう駄目だと観念して、息を詰めた瞬間、自分が放ったものが乾の手を濡らした。
だが、限界が訪れたのは、自分だけではなかった。
ほんの一瞬遅れて、乾も登りつめたのが、絡んだ足にはっきりと伝わってきた。

暫くは何も言えず、仰向けになって、ただ荒い呼吸を繰り返していた。
身体は完全に弛緩していて、寝返りを打つことさえできない。
目を閉じたまま胸を喘がせていると、乾がそっと唇を重ねてきた。
体重をかけない様に気遣って、上からふわりと覆いかぶさるようなキスだった。
乾には、何も教える必要はないと思っていたけれど、わかってないこともあるらしい。
こんなときは、身体を全部預けて欲しいのに。

手塚は両腕を乾の背中に回し、思い切り抱き寄せた。
察しのいい男はすぐに手塚の意図を理解し、全身の力を抜いて手塚を抱き返す。
気持ちのいい重みに、つい息が漏れた。
乾のがっしりとした胸の厚みは、見ているだけではわからなかった。
これを知ることが出来ただけでも、嬉しい。

「……駄目だ」
普段以上に低い声で乾が呟く。
「どうした?」
瞼を開くと、眼鏡のない乾の顔がすぐ目の前にあった。
乾は僅かに眉を寄せ、唇を噛んでいた。
額にはまだ汗が残っていて、それがとても色っぽい。

「全然、おさまらないんです」
恥ずかしいけど、と乾は困ったように笑った。
そこまで言われれば、何のことかはわかる。
「もっと欲しいと言ったら怒りますか?」
「まさか」
手塚がくすっと笑いかけると、乾は安心したように息を吐いた。

「いいんですか?」
「ああ」
「…最後まで、やりたいと言っても?」
「最後?」
手塚の問いかけに、乾は黙って頷いた。

「挿れたい」
そう言ったときの乾に顔を、手塚は当分忘れることが出来なくなりそうだと予感した。
その時々で、優しかったり意地悪だったりする乾の眼は、今は熱を帯びたような色をしている。
今度は、手塚が黙って頷く番だった。
本当は、最初からそうされたかったのだと、今気づいた。



2008.10.26(6に続く)