レトロウイルス:BIRTHDAY.ver6(R18)
一度、乾が何か言いかけたように見えたが、思い直したように手塚に軽く触れるだけのキスをした。
だが、すぐに、「あ」と小さな声を上げる。
「先生」
「国光だ」
すみませんと笑顔で謝りながら、乾は上半身を起こした。

「えーと、国光さん。…ゴム、持ってます?」
恐る恐るといった様子で、乾は口を開いた。
「ここには、ない。仕事場では寝ない主義だと言っただろう」
「…そうか。困ったな。俺も持ってないんです」
「俺は、使わなくても構わないが」
「いいんですか?」
「君に抵抗がないなら」

乾は両の目を細めて、にっこりと笑った。
いっそ無邪気と表現したいような顔だ。
「ないですよ、そんなの」
くだけた口調で言ってから、今度は、とびきり艶めいた声で囁いた。
「今すぐ証明して見せます」
「見せてもらおう」

手塚はベッドの上に完全に仰向けになり、自分から両腕を伸ばした。
どんなことも、すべて受け入れる。
その覚悟があることを、知って欲しかった。
聡い男は、静かに頷いて、手塚の腕の中に降りてきた。

「このままで、いいですか?」
「ああ」
同性と寝るのは、勿論初めてではない。
男同士にはどういう体位が向いているか、くらいの知識や経験はある。
この姿勢は決して楽とは言いがたいが、今はどうしても顔が見たかった。

片手が膝の裏に差し込まれ、そのままゆっくりと持ち上げられる。
再び硬くなり始めた場所を、自分と乾が吐き出したもので濡れた手が、ざらりと撫でた。
く、と息を詰める。
少しの刺激でも、簡単にそこに熱が集まっていく。

乾が迷うようなら、どうして欲しいかを教えてやろうと思っていた。
だが、そんな様子はまるでなく、乾は唇や指先で手塚の敏感な場所を探り当てている。
胸の先を軽く撫で上げられたときは、つい声を上げてしまった。
乾がそれを聞き逃すはずはなく、今度は唇に含み、舌の先で転がすようにする。
その刺激は、他の部分の比ではない。
胸の先から、電流のように身体の芯を通りぬけた。
ぐんと体内の熱が上がる。

指が後ろに触れるのも、ごく自然だった。
円を描くように表面を撫で、それから指先だけが中に差し込まれる。
濡れた感触に、びくっと身体が揺れた。
「痛い?」
「ちが…う」

乾はふっと笑うと、続けますと囁くように言った。
次の瞬間、差し込まれた指がぐるりと動く。
ん、と声が漏れる。
同じ動を、乾は、二三度繰り返した。
そして、もう大丈夫と判断したのか、今度は長い指を、もっと深くまで埋め込んできた。
さっきよりも、大きく腰が跳ねる。

今度は乾は何も聞かなかった。
きっとその必要はないのだろう。
手塚がどれだけ感じているか、乾には手に取るようにわかるはずだ。
ゆっくりと抜き差しを繰り返す指に、手塚は声を抑えることが出来なくなっていた。
その上、前の昂ぶりにも刺激を加えられ、更に感度が上がっていく。

乾の行動に、気遣いは感じられても、躊躇う素振りは少しも見せない。
「君は…本当に、男と寝るのは…初めてなのか?」
「初めてですよ。でも、身体の作りは同じだから、想像はつきます」
乾は汗の粒が浮かぶ顔で、ふっと笑った。
「嬉しいな」
「な、に?」
「そう聞いてくれたのは、いいからでしょう?」

ベッドサイドのスタンドがついたままだったので、眼鏡がなくてもこれだけの至近距離なら、乾の表情はよく見える。
「違いますか?」
嬉しそうに微笑むに顔は、優しさと色気が交じり合っていた。
今夜だけで、今まで知らなかった乾の表情を、いくつも目にしている。

「違わ…ない。すごく、いい」
自分の言葉で、自分が高揚するのがはっきりとわかった。
指だけで、こんなに感じてしまったのは、初めてだった。
良すぎて、身体の内も外も、解けてしまいそうだ。

どうして、という疑問の答えは、すぐに思い当たった。
乾は、とても指が長い。
だから、手塚が思ってもいなかった場所まで届いてしまうのだ。
あの、いかにも器用そうな長い指は、今手塚の中にある。
それを意識すると、更に身体が熱くなった。


2008.10.28(7に続く)