Weekpoint おまけ

やっとみつけたと思った乾の弱点は、今はもう、そう呼べなくなってしまったようだ。

翌日では、恐らくまだ早い。
少なくとも三日くらい経たなければ、乾は油断しないだろう。
念のために、もう一日。
手塚が、再度乾の弱点らしき場所を、つついてみたのは、例の日から四日空けてのことだった。

風呂上りには服を着たがらない乾は、その夜も上半身裸のままでベッドに寝転がっていた。
仰向けになって足を組み、手には文庫本。
しかも今夜は、小さいヘッドホンで音楽まで聴いている。
千載一遇と言うと大袈裟だが、チャンスであるのは間違いない。
乾の視角になる位置を確かめつつ、そっと近づき、指の先でつんと臍をつついてやった。

「わ!」
びくっと腹を震わせて、乾はすぐに身体を起こした。
だが、このあいだのような派手なアクションはない。
おもむろに文庫本を脇に置き、両手でヘッドホンを取り去るくらいの余裕がある。
一応、驚いた声は上げたが、上目遣いで笑う顔は楽しそうだ。

「びっくりしたよ」
にやにやとしながら言われても、到底それを信じる気にはなれない。
「嘘をつくな」
「いや、ほんとに。でも、この間ほどの衝撃はないな」
まったく、この男は可愛くない。
手塚は乾に背を向け、ベッドの端に腰を下ろした。

「あれ?もうお終いなのか。もっと触ってくれていいのに」
「これ以上触っても、つまらない」
逆に、乾を喜ばせるだけだ。
「じゃあ、俺が触ってみてもいいか」
顔を見なくても、乾が面白がっているのが伝わってくる。

「だめだ」
乾がその気になれば、本来は弱点じゃないところも弱くなってしまう。
多分、自分がどれほど乾が好きかを知られたときから、しっかりと弱みを握られているんだろう。
手塚だって、乾の弱みを握ったはずなのに、それをどんどん克服していくなんてずるい。

「手塚」
だめだと言ったのに、乾は背中から手塚の身体に腕を回し、そのまま抱きかかえた。
パジャマの裾から進入してきた手は、手塚の腹の辺りを、まさぐっている。
わざとらしいほど、わかりやすい動きに、つい笑ってしまう。
弱点克服も兼ねて、しばらく乾の好きにさせてみよう。
どうせ、最終的には、手塚にとっても気持ちのいいことが待っているのだから。

2008.05.19

同棲大学生。「Weak point」のオマケ。
「手塚は「へそをいじりすぎると、腹が痛くなるぞ!」とか、言い出すとかわいいと思う。
まあ、うっかりそんなことを言おうものなら、乾は「それはね、手塚」と、薀蓄を語りだすだろうけど。