Esquisse 05(※R18)

押しつぶしてしまわないように気をつけながら、少しずつ身体を前に進める。
きついところを通り抜けたとき、ああ、と微かな声が聞こえた。
それから、手塚は、長くゆっくり息を吐く。
薄く開いた唇は、少し濡れている。
うっとりと目を閉じ、白い胸を上下させている様は、快感に浸るというよりも、安堵しているように見えた。

額にかかった前髪を、指先で払うと、手塚は静かに目を開いた。
薄い茶色の瞳からは、テニスボールを追っているときの強い光は消えている。
そのかわりに、ベッドの上でしか見られないしっとりとした艶を帯びていた。

「気持ちがいい?」
わかりきったことを聞くのは、口に出して欲しいからだ。
「ああ。すごく」
低いけれど、はっきりとした言葉が返ってきた。
乾の望みの通りの答えに、満足する。

ベッドに入ってから、実際に身体を繋ぐまで、たっぷりと時間をかけている。
今はただ挿入しているだけで、特に何もしていないけれど、熱くなった肌から汗が引くことはない。
乾の、ほんの少しの身じろぎさえ、手塚には十分な刺激になるらしい。
呼吸するためのわずかな振動に、手塚は何度か甘い息を漏らした。

「本当に、気持ちが良さそうだ」
乾が笑うと、手塚もふっと微笑む。
「お前にはわからないだろうな」
「なにを?」
乾の背に掌を滑らせ、手塚は再び目を閉じた。

「自分の内側に、お前がいるという感覚だ」
「ああ、確かに俺にはわからない」
回数を数えらないくらい、何度も手塚を抱いてきた。
でも、その逆は一度もない。
もちろん、手塚以外の相手とも、だ。

「それが、いいのか?」
「そうだ」
すごくいいんだ──。
囁くような声は、乾の背筋をぞくりと擽る。
わざとのように見えても、多分そうではない。
だから手塚は怖いのだ。

「どんな風にいいのかな」
催促代わりに耳たぶを噛むと、手塚はくっと息を詰める。
ここがとても敏感なのは、百も承知だ。

「中が…溶けてしまいそうなんだ」
「うん」
「でも、お前はしっかりと、内側にいる。それが…安心する」
手塚はちゃんと乾の目を見て、そう答えた。
冷静に見えるが、呼吸は少しずつ乱れ始めている。

「うまく、言えないな」
「いいよ。これ以上、言わなくても。身体に訊くから」
「そうしてくれ」
手塚は、くすりと笑うと、背に回した手に力を込めた。

抱きしめた肌は、火がついたように熱い。
手塚の内側で脈打つ、自分の一部も、きっと熱く滾っているだろう。
体重を支えていた腕をはずし、全身を手塚に預ける。
大きく仰け反らせた喉元に唇を這わせると、びくりと手塚の身体が震えた。

俺を受け止めて。
俺を感じて。

そう頭の中で繰り返しながら、手塚を突き上げた。
抱いているはずの手塚に抱きしめられて、自分の方が先にいきそうだった。

2009.05.07

同棲大学生のふたり。ただのエロ。