MAKE LOVE

「今日は何がしたい?」と聞いたら、
「セックス」と間髪置かずに返された。

「昨日、あれだけやったのに」
つい笑いながら言ったら
「嫌か?」と問われた。
勿論俺に異存などなく、すぐに二人でベッドの上に移動した。



自分から「したい」と言うだけあって、手塚の身体はあっという間に熱を上げた。
俺の指や舌がどこを触れても敏感に反応して甘い声を洩らす。
散々焦らして可愛がって、手塚が声すら上げられくなった頃に、膚より更に熱い場所を穿った。

何度も角度を変えて交わって、終わった時には手塚はうつ伏せで横たわっていた。
二人分の汗を吸ったシーツは湿って捩れて、淫猥な形を作っている。
手塚の体液が染み込んでいると思うと、シーツにさえも嫉妬する。
手塚の全てを独り占めしたいと、ただそれだけを強く願った。



「気持ちがいい」
身体をつないだまま、わざと項に息がかかるように手塚に告げた。
「俺も」
「良すぎて、抜きたくない。しばらくこのままでいていい?」
「好きなだけ…そうしていろ」
囁くような声はまだ艶を帯びたままだ。
「重くないか」
「重いのがいいんだ」
可愛い返事が気に入って、俺は手塚の白い首筋にキスをした。

眠るでもなく、話をするでもなく、互いの鼓動と吐息だけがシンクロする。
汗で濡れた膚がくっついたように触れあっていて、体温さえひとつになっている気がした。
こんなに手塚を近く感じたことは無かったかもしれない。

「乾」
呼ばれて、ふと我に返る。
「ん?何」
「やっぱり…どけてもらっていいか」
「重いのが辛くなってきた?」
「そうじゃない…が」
まだ離れるのが名残惜しくて、後ろから手塚の腰に手を回した。

「あ」
短い声と同時に、手塚の身体がびくっと震える。

そういうことかと俺は笑った。
「また、良くなってきた?」
回した手に更に力を入れて引き寄せると、手塚はくっと息を飲んだ。
「動く…な」
「感じちゃうから?」
肩越しに覗き込むと、手塚がぎゅっと唇を噛んでいるのが見えた。

「抜いてくれ」
「いやだ」
「頼む、から」
手塚の呼吸が少しずつ乱れていく。
それが楽しい。

ふ、と苦しげに息を吐いてから、手塚は首を少し捻って俺を見上げる。
怒ったようにも、誘ってるようにも見える目をしていた。
「中に…まだお前がいると思うと…堪らない」
「それは嬉しいな」
「馬鹿。こっちはそれどころじゃ…」

文句を最後まで言わせずに、唇を塞いだ。
軽く触れて直ぐに話すと、いぬいと掠れた声がする。
強請るような唇の隙間に舌を捻じ込むと、繋がった腰がびくりと揺れた。

首以外はなるべく動かさないようにしながら口腔を犯すと、手塚は胸を喘がせながら俺に訴える。
動くか抜くかどっちかにしろと。

「手伝ってくれる?」
「何を…だ」
「手塚が自分で動いてみて。そしたらきっと直ぐに俺もできるようになる」
「本当に、か」
「うん」
俺が頷くと、手塚は目を伏せて唇を噛んだ。

手塚はゆっくりと息を吐いて、それからぎこちなく腰を揺らした。
さほど大きな動きではない。
細い腰をほんの僅か俺に押し付けて、そして引く。
たったそれだけで手塚の両肩は震えている。

「すごく、いい」
体重を少し手塚から逃がして、動きやすくしてやった。
手塚は短い呼吸を繰り返しているが、中々大胆には動こうとはしない。
出来ないのか、したくないのかは俺にはわからない。
でも、これじゃまだ足りない。

「手塚」
煽るつもりで名前を呼ぶと、手塚は切なげに息を吐いた。
「ほら。もっと」
掌で腰骨を撫で上げ、胸を触ると、今度は手塚の全身が震えた。
繋がった部分も同時に収縮して、俺達は二人一緒に息を詰めた。
手塚の足に力が入り、腰が浮くのがわかる。
まだ充分ではないけれど、手塚にはこれが精一杯なのかもしれない。

融かされそうな中の熱と、締め付ける感触にくらくらする。
とっくに俺は硬度を取り戻しているのに、手塚はそれに気づいていないのだろうか。
そんな余裕すらないのかもしれないと思ったら、手塚が可愛くて堪らなくなった。
力を込めて手塚の腰を引き寄せると、声を上げて背中を反らせた。

「まだ…か」
寄せた眉の間に汗が光る。
「ありがとう。もういいよ」
肩にキスをひとつ落として、固くシーツを掴む手を上から包み込んだ。
空いてる方の手で細い腰を支え、一度手塚の中から引き抜いた。

く、と小さな声がした。
それから、一息に奥を突いた。
手塚の全身が硬直して、中もきつく締まる。
掠れた声で何度も俺を呼ぶのが愛しくて、無理やりに体勢を入れ替えた。
向かい合わせで抱きしめると、必死ですがり付いてくる。

「手塚」
きつく閉じたままの眦にもキスをする。
ふ、と甘い息が洩れる。
「俺が欲しい?」と聞くと、手塚は首を縦に動かして肯定する。
「俺も手塚が欲しい」と言うと、今度は手塚が唇を押し当ててきた。

あとはただ貪るだけ。

焦らした分を埋め合わせるように、俺は手塚を執拗に抱いた。
一度では足りずに何度か手塚の中に吐き出して、結局は夕べと同じように疲れ果てて眠ってしまった。

手塚が帰るまで、ずっとこんな時間を過ごすのかもしれないと、半分夢の中のいる麻痺した頭で考えていた。


2005.9.5(2010.01.20再アップ)

「Lagrange Point」(旧・絵と文章内にあります)誕生日話のオマケみたいなものです。
自分から動く手塚を書きたかったのです。本当は乾の上に乗っかって、大胆に動くシーンも入れようかと思ったんですが、何時までたっても終わりそうも無いのでやめときました。

話なんてないの。ただやらせたかったの。
(2010.01.20一部修正)