MAKE LOVE2 −痛み−
今日、初めて手塚の中で射精した。つけるのを忘れたふりをして、向かい合わせで抱き合い、手塚を俺の上に乗せたままにする。
俺だけでなく、手塚ももう限界が近いことを確かめてから、耳元で囁いた。
「中に出していい?」
手塚が嫌だと言わないことは、最初からわかっていた。
それを承知で、わざと聞いた。
予想通り、手塚は震えながら頷いた。
「いいんだね?」
念を押すと、俺の背中に爪を食い込ませながら、掠れた声で応えた。
いいから、とごく小さな声で──。
その後に続く言葉を、俺は知っている。
だから、その通りにしてやった。
汗で滑る身体をしっかりと抱きなおして、名前を呼びながら手塚の中でいった。
ほぼ同時に達して、がくりと力の抜けた身体を両手で受け止める。
手塚は、俺の肩口に頭を乗せて苦しげな呼吸を繰り返していた。
腕の中にすっぽり収まる身体は、痛々しいくらいに細い。
本当は、すぐに開放してやるべきだと、頭ではわかっている。
まだ抱かれることに慣れていない手塚には、長い時間つながっていること自体が苦痛だろう。
だけど、薄い背中を上下させて、必死で俺にしがみ付いてくるのが可愛くて離せない。
ひどい奴だと自分でも思う。
なのに、手塚は途切れる声で俺に言った。
「痛い…か?」
「何が」
「肩に傷を…つけたみたい…だ」
「平気だよ」
「多分…背中にも」
「大丈夫。痛くない」
俺が笑いながら答えると、手塚は小さな声でそうかと言った。
本当は、わかっていた。
手塚の爪が付けた傷が、血を滲ませているだろうということは。
ちりちりとした痛みが、それを教えてくれている。
だけど、手塚に与えた苦痛を思えば、これくらいは痛みの内に入らない。
それをわかっていても、こうして手塚を抱いてしまう身勝手さを笑うしかなかった。
疲れて眠ってしまうのを待ってから、手塚の中に放った自分の欲の証を始末した。
眠ったままでさえ、少し苦しげに歪んだ手塚の顔に、ごめんねと何度も謝った。
2005.9.25(2010.01.19再アップ)
痛い話になっちゃったな。二人とも高校生くらいの、まだやりなれてない頃という設定。
乾にとっての手塚は恋愛の対象であって、性欲の対象でもある。だけど崇拝に近い気持ちもずっと残っている。だから手塚を抱くことに馴れないうちは、罪悪感もあったんじゃないかなあと思ったんですよ。自分の欲望だけでこんなことをしていいのかと。
乾は手塚はすっごく無理して抱かれてくれてると思い込んでいるんですよ、きっと。もう少し時間が経って、余裕が出てきたらきっとそうじゃないとわかるんだろうなあ。
(2010.01.19修正 あとがきは当時のままです)