MAKE LOVE3 −虚−
背中から、身体を抱きしめている両腕に、更に力が加わる。荒い呼吸が一瞬途切れて、呻くような低い声のあとに、熱い吐息と確かな脈動。
そして、一瞬の空白。
いつもそうだ。
その瞬間は何も耳には届かず、何も目に映らない。
わかるのは、ただ乾がそこにいるということだけ。
自分の名前を呼んでいることだけ。
決まって最後には自分からすがりついてしまう腕を、そっと解かれて、貫いていたものが体内から抜き去られる。
空虚になった場所を、今すぐに埋めて欲しいと願い、同時に、二度と抱かれたくないとも思う。
好きなのに。
好きだから。
離れることが辛いのに、近づきすぎると苦しくなる。
どうしていいのかわからないまま、その先を考えることを放棄する。
だが、わかっていることが、ひとつある。
この先、いつか乾と離れて、誰かをこの腕に抱くことがあるとしても。
自分を抱く男は、乾が最初で最後だということ。
乾だけが、俺にとってのただひとりの男。
2005.10.1