Esquisse 04(※R15)
自分の足の間で、前後に動く形のいい頭を、両腕で抱きこみたい衝動に駆られた。強い快感のせいなのか、愛しさのせいなのか、自分でもよくわからない。
無理に区別する必要もないのかもしれないが。
手塚の視線に気づいたのか、乾は一度唇を離して、顔を上げる。
眼鏡のない切れ長の目と、体液の付着した薄い唇。
そのどちらも、笑っている形になっていた。
こんなときにどうかしていると思うくらい、優しい顔だった。
行為の最中は、見るのも見られるのも恥ずかしくて、ずっと目を閉じていたこともあった。
だが、それもいつのまにか平気になった。
今は、見た目ほど硬くない髪の毛を、撫でるくらいの余裕はある。
手塚は、呼吸を乱しながら。
乾は、唇を汚したまま。
目を合わせて、微笑みあう。
さあ、もっと続けようと、確認するように。
再び、手塚の昂ぶりを咥え込もうとする乾の肩を、押し留める。
「どうした?」
「制服が汚れる」
「脱ぎたいのか?」
「ああ」
乾は、一度身体を離して立ち上がり、自分から先に服を脱ぎ始めた。
手塚はベッドの上に座ったまま、シャツのボタンを外す。
途中からは、先に裸になった乾が脱ぐのを手伝った。
手塚の両足からズボンを抜き取り、そっと上半身を押して、その場に寝るように促す。
それに逆らわず、手塚は身体をベッドに横たわらせた。
制服が汚れるからというのは、ただの言い訳だった。
本当は、素肌で乾の身体を抱きしめたかったからだ。
それを既に知っているかのように、乾は力を抜いて、全身を手塚に預けた。
慣れた重みが、心地良い。
ぴったりと身体を合わせると、互いの昂ぶりに触れる。
一度行為を中断したのに、そこはまだ硬さを少しも失っていない。
乾の唇から漏れた吐息が耳朶を擽ったり、湿った肌が胸の先を擦ることで、更に反応する。
手塚の期待値そのままに硬度を増した。
「あまり待たせない方が良さそうだな」
にやりと笑う乾に、手塚は頷いて見せた。
だが、きっと乾のことだ。
わざと時間をかけて、手塚を焦らすつもりだろう。
乾は、手塚の期待を裏切ることはないが、予想を裏切ることはある。
口に出した通り、すぐに繋がる場所に指を差し込む。
言葉にしたことを素直に実行されて驚くなんて、普段の乾はどれだけ天邪鬼なのか。
でも、それでこそ、乾なのだとも思う。
ひゅっと喉が鳴るくらいの快感に、背中が反り返る。
呼吸がうまく出来ず、一瞬意識が遠のく。
でも、きっと、今の自分は笑っているだろう。
霞んだ目に映る乾も、荒い呼吸をしながら、笑いを浮かべていた。
少しだけ苦しげで。
だけど気持ちがよくて仕方ないという様な。
そんな笑い方をする乾が、好きでたまらなかった。
2008.04.27
高校生乾塚。学校の帰り。
気持ちがよくて、どうしようもないっていう二人を書きたかった。