ふわふわ オマケ

とても柔らかくて暖かいものに包まれている。
そんな夢を見ていた。
とにかく気持ちが良くて、可能ならば、いつまでもこうしていたい。
そんな気分だったのだろうと思う。

心地良い眠りを覚ましたのも、やっぱりふわふわした暖かいものだった。
すぐ傍で、何かがもぞもぞと動いている。
寝惚けていても、それが猫だということは、なんとなくわかった。
重い瞼を開くと、目の前に眼鏡をかけていない乾の顔がある。
寝ているのか――
ここでようやく、今まで、自分も眠っていたことに気づいた。

確か、本を読んでいたはずなのに、いつのまに寝てしまったのだろうか。
ぼんやりと考える。
眼鏡はかけたままだが、手には何も持っていない。
身体には、ちゃんと毛布が掛けてあった。
手塚がそんなことをした覚えはないし、猫にそんな芸当が出来るとも思えない。
ほぼ間違いなく、乾がそうしてくれたのだ。
だが、目の前の乾は何も掛けずに眠っているようだ。
どういうことだろう?

半分寝惚けながらも、状況を整理してみた。
最初は猫を膝に乗せ、ベッドの端に座った状態で本を読んでいた。
そのうちに少々疲れを感じてきたので、少しだけのつもりで横になった。
そこまでは覚えている。
どうやら、そのまま眠ってしまったらしい。
その間に、乾が気を利かせて毛布を掛けてくれたのだろう。

ただ、乾まで、ここで寝ている理由はわからない。
自分も眠くなったのか。
一人が寂しくなったのか。
単に、つきあいがいいだけかもしれない。

念のために、乾の頬を軽く押してみたが、ぴくりとも反応しない。
寝たふりではなく、本当に熟睡しているようだ。
居心地のいい場所を求めているのか、乾と手塚の間では、猫がもぞもぞ動き回っている。
手塚がそっと手を差し出すと、頭を擦り付ける甘えた仕草を見せた。

どれぐらい寝ていたんだろう。
それよりも、まず、今は何時なのか。
起き上がるのが億劫で、寝そべったまま考える。
少し首を捻れば時計が見えるはずだが、それすら面倒だ。
とにかく暖かくて、気持ちがいい。
ふわふわとした夢の残り香みたいなものが、まだ自分を捉えている。
目を閉じれば、すぐにまた眠れそうだ。

起きてしまうのが勿体無いが、昼間から寝てばかりいると、夜に眠れなくなってしまうだろうか。
でも、どうせ今夜は素直に眠らせてはもらえないだろう。
それなら今のうちに、たっぷり睡眠をとっておくのもいいか。

開き直って毛布をかぶり直す。
ふと見ると、猫も乾の手を枕にして、ころりと丸くなった。
本格的に寝る態勢に入ったようだ。
猫が相手をしてくれなくなったと、乾は嘆いていたけれど、ちゃんとこうやって甘えているんじゃないか。

猫だって、よくわかっているのだ。
乾の傍で安心しながら眠る心地よさを。

猫の頭を撫でると、目を細めてごろごろと喉を鳴らした。
きっと、今の自分も、猫と同じような表情になっているのだろう。

2008.01.30

今夜はやりまくるようですよ、この人達。